こんにちは。おくたです。
今回は末梢ルートの取り方についてお話ししていこうと思います。
末梢ルート確保で苦労している方に向けて、私なりの取り方のコツをお伝えします。
私も医師として勤務したてのころは、ルート確保には苦労しました。患者さんに何度も穿刺して迷惑をかけたことも度々ありましたし、先輩医師やベテラン看護師はなんであんなにうまくルートが取れるんだと思っていました。
しかしルート確保を日々やっていく中で、先輩からコツを聞いたり、自分自身で成功率が上がる方法をみつけ、徐々に失敗の数も減っていきました。
ルート確保の成功率を上げる方法を共有させていただき、少しでもみなさんの参考になれば嬉しいです。
ルート確保は、準備7割・技術3割
ルート確保を成功に導くための最も大切なことはズバリ準備です。成功する要素として準備が7割、技術が3割を占めていると私は思っています。
準備が満足にできていないと、どれだけルート確保の技術があったとしても失敗する可能性は高くなり、結果患者さんが痛い思いを何回もすることになってしまいます。当たり前のことかもしれませんが、準備をしっかりと行うことが成功するための第一歩です。しっかりと準備を行った上で穿刺の技術を身につけていきましょう。
準備
では実際に準備するものを確認しましょう。
- 留置針(18〜24ゲージ)
- 駆血帯
- 消毒剤(アルコール綿など)
- 針捨てボックス
- 枕やタオル
- 手袋
- 点滴ルート
以上の物品を準備します。ルート確保する時に、「物品がない」と慌てることがないようにしましょう。
針の太さは目的に合わせて選択しましょう(輸血用であれば18〜20ゲージを使用するなど)。アルコール綿などの消毒剤はアルコールでアレルギーがでる患者さんもいらっしゃるのでアルコール不使用のものも準備しておくと安心です。
物品を準備したのち、患者さんのもとに向かいます。
腕の下に枕またはタオルをおいて、穿刺部位をしっかりと伸展させます。そして自分が穿刺しやすい位置に患者さんの腕を動かしましょう。消毒剤や留置針は開封しておき、全ての物品を自分の近くに置いておきましょう。
ここまでを確実に行うことが大切です。しっかり準備して臨みましょう。
穿刺のコツ
しっかりと準備できたら、いよいよ穿刺していきます。ここでは私なりの穿刺のコツを紹介していきます。
血管選び
血管の選び方として
「見える」、「まっすぐ」、「触れる」
の3つの要素を満たす血管を選びましょう。しかし、なかなか3つの要素を全て満たす血管がない場合もしばしばあると思います。その際私は「見える」、「まっすぐ」な血管を優先して選択しています。
見えない血管を盲目的に穿刺することは、特に慣れていない頃は非常に難しいです。もちろんある程度経験があれば見えなくても、指先で触れたりすることができれば指先の感覚を頼りにルート確保することができると思います。しかし慣れていないうちはまず「見える」血管を選んだほうが良いでしょう。
そしてできる限り「まっすぐ」な血管を選びましょう。蛇行が激しい血管は穿刺する時に方向が定まりにくく、またルート確保できたとしても点滴の落ちが悪くなるリスクが高いです。
駆血帯の巻き方
駆血帯を巻く際の注意点として2点あります。
- 位置は筋肉の厚い部位(上腕の中央や前腕一番太い部位)
- 強さは「ほどほどにキツく」
まず巻く位置は筋肉がよく集まっている太い部位を選びます。筋肉を一緒に巻き込んで駆血するイメージです。前腕に穿刺する場合は上腕の中央、手背で穿刺する場合は前腕の一番太い部分を駆血部位として選択すると良いでしょう。
そして駆血帯を巻く強さとしては「ほどほどにキツく」です。
よくできる限りキツく駆血帯を巻く人がいますがこれはおすすめしません。その理由として、静脈をうき立たせるためには静脈のみを圧迫して動脈を圧迫しないことが大切です。キツく巻きすぎて動脈まで圧迫してしまうと静脈に流れてくる血液も少なくなりいつまで経っても静脈は浮き出てきません。また患者さんも腕がしんどくなりやすいです。
具体的にどれくらいの強さで駆血すればよいかと言うと、橈骨動脈が触れる程度のキツさが最適です。駆血帯を巻いた後に指で橈骨動脈を触知すると良いでしょう。
血管を浮き立たせる方法
適切に駆血しても血管が浮き出てこない。そんなこともよくあります。その際は以下のことを試してみてください。
- 腕を下げる
- 血管を軽く叩く
- アルコール綿で消毒する
- あたためる
前腕や手背にルート確保する場合は、腕を下げると重力の影響で血液が心臓へ戻りにくくなり、結果として静脈が浮き出てきやすくなります。
また血管を軽く叩いたり、アルコール綿で軽く消毒するとその刺激により血管が拡張しやすくなります。あたためることも血管を拡張させるために有効です。
穿刺のコツ
穿刺の角度
穿刺の角度は基本的には10度くらいです。末梢の静脈は通常は比較的浅い位置にあります。そのため10度程度の浅い角度で穿刺していくのが良いでしょう。
針の進め方
針の進め方はの原則は「血管の走行に沿ってまっすぐに」です。ルート確保が苦手な方は、自分が血管に沿って進めているつもりでも少しずれていることがよくあります。そのため血管の走行を穿刺前にしっかりと確認して進めていくことが大切なポイントです。
また進める時は必ず針を持っている手をどこかに固定しておきましょう。針を進める手が宙に浮いていると安定しません。針を持っている手の小指を机などに固定しておくのがおすすめです。
逆血を確認したとき
針を進めていき、内筒が血管に当たれば逆血が返ってきます。この時はまだ外筒が血管内に入っておらず、この状態では外筒を血管内に進めることはできません。
逆血を確認したらほんの少しだけ穿刺角度を浅くして、外筒に逆血を確認するまでゆっくり進めます。
外筒に逆血が確認できたら、そこからあと2〜3mm進めることがとても大切です。外筒に逆血を確認しただけでは外筒の一部だけが血管内に入っただけの可能性があります。そのため外筒全体を確実に血管内に入れるために2〜3ミリ進めることをやってみてください。
留置ができたあとに確認すること
外筒を留置したら、駆血帯を外し、内筒を抜きます。このとき血液が漏れないように留置した外筒の先を軽く指で圧迫しておきましょう。それから点滴をつなぎます。
そして「滴下がスムーズか」、「穿刺部位の腫れがないか」、「痛みの増悪がないか」の3点を確認します。3点のいずれかを満たしていない場合は適切に留置できていない可能性が高いため、ルート確保をやり直した方が良いでしょう。
まとめ
ルート確保のポイントをいくつか紹介していきました。
今回述べたポイントを意識すれば、誰でも必ずルート確保が上達します。
少しでもみなさんルート確保の一助になればとても嬉しいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。これからも臨床で使える知識や経験を共有していきますね。
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